熊本地震から2年という「分岐点」

IMG_0454.JPG

2016414日熊本に大地震が発生した。

あの日は、昼間は普通に仕事をし、夜のセミナーに参加していた。そこまでは、なにも変わらない普通の日を過ごしていた。

セミナーが終わり友人と歩いて帰っていた。

そんな中、突然地面が揺れた。

最初はなにがなんだか分からずにいた。



急いで家族に電話をし、安否を確認した。

その時、家族は震源地の近くで子供を寝かせる時だった。


余震に怯えながら、車を急いで走らせた。

あの日から熊本の生活は一変した。


大地震から2年が過ぎた。


私からは、「節目」という2年ではなく、「分岐点」という視点で感じていることを書きたいと思う。

1.被災者にとっての2年

災害救助法により、応急仮設住宅の供与期間は「原則2年」を定められてる。

つまり、プレハブ仮設、みなし仮設に仮住まいしている人にとって、2年を過ぎた段階で、次の住まいへの引っ越しがよぎなくされる。

熊本の災害支援においても、ここが適用されて、「仮住まいでの延長」に対して条件がついた。

 

基本的に大多数の方が延長を認められることになっているが、この「条件付き」というのはとても大きい。

延長を認められなかった人にはもちろん、延長をできた人にとっても。

 

というのは、「常に1年更新」が今後やってくるということだ。これは精神的にとても影響が大きい。

ある聞いた話によると、延長を認められる人であっても、市営住宅への引っ越しを決断された方がいらっしゃるという。

 

「毎年毎年更新のために行政への手続きをしなければいけないし、その都度延長されるかどうか不安になる。そんな不安を抱えながら仮住まいを生活していくよりは、早く長い期間住み続ける家を探して引っ越したほうが良い」

 

ということであった。みなし仮設に住んでいれば、家賃は補助されるにも関わらず。

一つの事例ではあるが、この話を聞いたときに、被災者の方は精神的にとても追い詰められてきているであろうと感じた。

 

2.支援団体にとっての2年

災害後、熊本県内でも数多く立ち上がった支援団体、そしてボランティア活動。

今ふと周りを見渡せば、どれだけの支援団体が継続しているのだろう。

 

県外から来ていた人たちは地元に戻り、県内の人たちでも、支援団体を離れ次の仕事についている人達もたくさんいる。

支援活動が必要なくなったわけではない。なくなってはいないが数はだいぶ減ってきている。

 

一番大きいのは「資金面」だ。震災後からこれまでは、いくつかの地震関係の助成金があり、その助成金をもとに多くの団体が活動していた。

2年という期間がたち、この助成金もほとんどなくなってきた。つまり、支援している人自身とっても、生活費を得るための選択に迫られている。

 

20184月になって、「支援活動から撤退します」という連絡をいくつも受けた。

もちろんニーズがある限り活動は続けたいという気持ちはあると思う。ただし、そこには活動費が必要だ。

 

資金面だけでなく団体運営としても大きな岐路にたたされている。

「支援活動」というだけでは、既に団体としての意義は薄れてきている。つまり、目に見える支援活動が大きく減ってきているということだ。

 

「コミュニティ支援」「社会貢献活動」

こういった、震災支援活動から次のフェーズへの活動シフトが団体運営そのものにも迫られている。

震災支援活動を通して見えた「社会課題」。ここで見えた課題を解決に向かうための活動もこれから必要になっていく。

そういう変化を起こすにしても、専門的なスキルはどうするのか?スタッフはどうするのか?運転資金はどうするのか?

 

ここが団体に問われている。


ーーー

このように、「熊本地震から2年」という言葉には、単なる2年という月日ではない、とてもとても大きな分岐点になっているのだと感じる。

 

今の大きな支援ニーズは、「生活再建(引っ越し支援)」と「コミュニティ構築支援」だ。

避難所から多くの人が仮住まいにうつった時と同じように、今度は仮住まいから恒久的な住まいへの引っ越しが始まっている。

 

人が動けば、そこにはコミュニティの再構築がうまれる。

これまでプレハブ仮設のみんなの家で作られてきたコミュニティは、引っ越しによって薄れていく。

残っている人は「取り残された感」を感じる人もいるだろう。引っ越した人は引っ越した人で、その人達は新たな地で新たなご近所づきあいが始まる。

 

自分が住む環境を変えたときのことを想像してほしい。

同じアパートに住む人、ご近所の人、新たに人間関係をつくっていくためにどれだけパワーがいるか。

ただでさえ、これからの生活に大きな不安を抱えた中で。


しかし、これから「暮らし」をしていく中で、地域コミュニティはとても重要だ。

人付き合いが面倒だからといって、住んでいる地域で人付き合いがあるとないとでは大きな差がある。

 

普段の生活におけるちょっとした会話、何気ない立ち話、そんな時間で人は落ち着いたり、安らかな気持ちになる。

私達は現在「みなし仮設」の交流支援を主にやっているが、この時間がどれだけ求められているかを感じた。

こんな何気ない時間をどれだけの人が求めているのか。どれだけの人がそれで次に向かって生きていけるのか。


「回復力の回復」

私達は、ここを意識して活動を続けていこうと思う。

やっていることが目に見える支援ではないかもしれない。今住んでいるところで、人がつながり会話が生まれること、それが被災者にとって、「回復力の回復」に少しでも力になればよいと思う。



よか隊ネット熊本も活動開始から2年がたち、大きな岐路に立たされている。

団体運営の継続は目的ではなく手段。

これまで活動してきた中で得られた経験、つながり、ノウハウ、これらをこれからの熊本に活かすためにがんばっていく。